多くの人が結婚し子どもを持つ親になることでしょう。その際、自分自身またはパートナーがわきが体質の人であれば、産まれてくる子どもにわきが体質が遺伝するのではないかと心配になる人もいるのではないでしょうか。結論からいうと親のわきが体質は子どもに遺伝してしまいます。子どもに辛い経験をさせたくないと考える方も多いでしょう。今回は親から子どもへのわきがの遺伝に関して詳しく解説していきます。

わきがの原因

わきがは病気ではなく体質

はじめに、わきがとはどのようなものであるか解説していきます。わきがとはアポクリン腺という器官から分泌される汗が体に存在する細菌に分解されるのですが、その際に作られる物質から発生するにおいのことを言います。

勘違いされがちですが、ここで重要なのはわきがは「病気」ではなく「体質」であるということです。もしわきがが病気であるとすれば、その原因であるアポクリン腺はわきが体質の人のみに存在することになります。

しかし、アポクリン腺はわきが体質である人そうでない人に関係なく誰にでもあります。

わきが体質の人はアポクリン腺の数が多い、またはアポクリン腺の活動が活発な体質です。

しかし、医療の現場ではわきがは腋臭症と名の付く病気として扱われることがあります。
これは本人が望んでわきがを治療する際に腋臭症として病気であると扱うことで保険の適用内で医療を受けることができるためです。

原因であるアポクリン腺とは

そもそもアポクリン腺とはどのようなものなのでしょうか。アポクリン腺は汗を分泌する器官です。

他に汗を分泌する器官にエクリン腺があります。エクリン腺は全身にあり、ほとんど水分からなる汗を分泌します。それに対して、アポクリン腺は脇や局部など限定的な部分にのみ存在し、タンパク質や脂質などの成分を含む汗を分泌します。

わきがは汗のにおいではないかと思われがちですが、エクリン腺から分泌される汗はその多くが水分であるためほとんどにおいがしません。

アポクリン腺から分泌される汗もそれ自体では無臭に近いですが、含まれる成分が人間の体にいる細菌に分解されることによってわきがのにおいを発します。元々はそのにおいが異性を惹きつけるフェロモンの役割をしていたと言われています。

アポクリン腺は誰にでも存在していますが、その数は遺伝された体質として生まれながらにして決まっています。

優性遺伝とは

優性形質と劣性形質

生物の身体的特徴は親から子へと代々受け継がれていきます。これを遺伝といい、人間の身体的特徴も他の生物と同じく遺伝していきます。

遺伝する特徴には「優性遺伝」と「劣性遺伝」が存在し、やみくもに遺伝しているわけではなく遺伝のしやすさに優劣があります。これを見つけたのはメンデルという19世紀の遺伝学の研究者で、この優劣の法則はメンデルの法則と呼ばれています。メンデルの法則を簡単に解説すると、優性遺伝はAで劣性遺伝はaとします。

子供は二人の親から半分ずつ遺伝子を受けるので子どもが持つ可能性のある遺伝子の組み合わせの種類はAA、Aa、aA、aaの4種類になります。

Aはaよりも遺伝しやすいのでAAとAaとaAはAの特徴を持ちます。aaのみがaの特徴を持ちます。

このように優性遺伝の方が遺伝しやすくなっています。決して優性遺伝が生物的に優れた遺伝子というわけではなく、ただ遺伝しやすいということです。

身近な例では一重が劣性形質で二重が優性形質です。なので親が二重の場合子どもも二重になる可能性が大きくなります。

わきが体質はどちらなのか

わきがは体質であると解説しましが、わきが体質が体質であるからには遺伝します。

わきが体質は優性遺伝と劣性遺伝のどちらかというと優性遺伝です。ですのでどちらかの親もしくは二人ともがわきが体質の場合は子どもに遺伝しやすいです。実際に海外では多くの人がわきが体質であり、わきが体質であることはとても普通であるようです。

しかし、日本をはじめとしたアジアの人はわきが体質の人が少ないことがわかっています。

親のわきが体質が子どもへ遺伝する確率

優性遺伝の考え方

親のわきがが子どもに遺伝する確率をメンデルの法則に従い計算していきます。

まずその前提としてAを優性遺伝、aを劣性遺伝とします。

また、子どもは親から遺伝子を半分ずつもらいます。

計算方法としては両親二人の遺伝子を掛け合わせて一つずつ組み合わせてどちらが何通りなのか数えます。
便利上A1a2と番号を振って親が持つ2つの遺伝子の区別をします。

例として父親A1A2と母親a1a2から産まれてくる子どもはA1a1、A1a2、A2a1、A2a2の4通りありますがすべて優性遺伝であるAを持つため子どもは100%優性遺伝を持って産まれます。

このように掛け合わせることで遺伝の確率を計算できます。この方法をわきが体質の遺伝の確率を算出するのに使う場合、わきが体質は優性遺伝ですのでわきが体質をAとし、わきがではない体質をaとします。

両親がわきが体質の場合と、どちらかがわきが体質の場合に分けて計算していきます。

両親がわきが体質の場合

両親がわきが体質の場合考えられる組み合わせは以下の通りです。

  • 父親A1A2母親A1A2
  • 父親A1A2母親A1a2
  • 父親A1a2母親A1A2
  • 父親A1a2母親A1a2

の4通りあります。

メンデルの法則を適用した場合、

父親A1A2母親A1A2のケース

産まれてくる子どもはA1A1・A1A2・A2A1・A2A2となり、すべてわきが体質になる可能性があります。

父親A1A2母親A1a2のケース

産まれてくる子どもはA1A1・A1a2・A2A1・A2a2となり、すべてわきが体質になる可能性があります。

父親A1a2母親A1A2のケース

産まれてくる子どもはA1A1、A1A2、a2A1、a2A2となりすべてわきが体質になる可能性があります。

父親A1a2母親A1a2のケース

産まれてくる子どもはA1A1、A1a2、a2A1、a2a2となり3通りわきが体質になる可能性があります。

よって両親ともにわきが体質の場合はすべての組み合わせの中でわきが体質になるのは15通り、わきが体質にならないのは1通りです。確率にするとおおよそ93%と高い確率で産まれてくる子どもはわきが体質を持って産まれてくると言えるでしょう。

どちらかがわきが体質の場合

両親のどちらかがわきがの場合考えられる組み合わせは以下の通りです。

  • 父親A1A2母親a1a2
  • 父親a1a2母親A1A2
  • 父親A1a2母親a1a2
  • 父親a1a2母親A1a2

の4通りあります。

メンデルの法則を適用した場合、

父親A1A2母親a1a2のケース

産まれてくる子どもはA1a1、A1a2、A2a1、A2a1となりすべてわきが体質になる可能性があります。

父親a1a2母親A1A2のケース

産まれてくる子どもはa1A1、a1A2、a2A1、a2A2となりすべてわきが体質になる可能性があります。

父親A1a2母親a1a2のケース

産まれてくる子どもはA1a1、A1a2、a2a1、a2a2となり2通りわきが体質になる可能性があります。

父親a1a2母親A1a2のケース

産まれてくる子どもはa1A1、a1a2、a2A1、a2a2となり2通りわきが体質になる可能性があります。

よって両親のどちらかがわきが体質に場合はすべての組み合わせの中でわきが体質になるのは12通り、わきが体質にならないのは4通りです。確率にすると75%で産まれてくる子どもはわきが体質を持って産まれてくる可能性があります。

わきが体質が遺伝する確率は意外と高い

メンデルの法則を用いて計算でわきが体質の遺伝する確率を算出しましたが、両親ともにわきが体質の場合は総合して93%、どちらかがわきが体質の場合は総合して75%と優性遺伝とは言えかなり高い確率で遺伝することがわかりました。

しかしこれらはメンデルの法則に従いあくまでも計算上すべての場合を総合して算出しています。生命は簡単に計算通りにいきません。

また、この計算ではそれぞれの遺伝子の組み合わせの人が同じ数だけいることを前提としており、前述の通り日本ではわきが体質の人は少ないのでAAを持っている人は少ないと考えることができます。AAを持つ人が少ないと考えるとそれに従い遺伝する確率は大きく下がります。

子どもに遺伝させない方法、遺伝したかを確かめる方法

遺伝を止めることはできない

高い確率でわきが体質が遺伝することがわかりました。

自身のわきがに悩まされている人の中には子どもに遺伝させて苦しませたくない、遺伝させずに済む方法はないのかと真剣に考えている人もいるでしょう。それによって結婚や出産をためらう人も少なくありません。

子どもにわきが体質が遺伝しない方法、遺伝しにくくする方法はあるのでしょうか。

残念ながらそのような方法はありません。顔かたちが遺伝することを防ぐことができないようにわきが体質が遺伝する体質である以上、遺伝に手を加えることや生活の仕方によって確率をどうにかするなどということはことはできません。

将来的に遺伝子組み換えなどが発展すれば可能になるのかもしれません。しかし、現在の医学では不可能といえるでしょう。

遺伝したかどうかわかる時期

子どもにわきが体質が遺伝したかどうかは子を持つ親としてはとても気になるところです。

また、自分のにおいですので、子ども自身で自分がわきが体質であると気づく場合は少なく、人に言われて知ることが大半のようです。

学校に行って友達に心無い言葉で言われるよりも、普段から子どもを観察し親が早く気づいてケアしてあげることが大切です。

しかし、産まれてすぐに子どもがわきが体質であるかはわかりません。わきがの原因となるアポクリン腺は思春期の頃に大きく発達するといわれており、それに伴いわきがも思春期の頃から発生することが多いです。

ですので子どもにわきが体質が遺伝したのかどうかわかる時期は思春期の頃であるといえます。個人差、性別で差はありますが小学校中高学年から中学校にかけてがわきがの発生し始める時期でしょう。

しかし、毎日の食生活や生活の乱れが関係し場合によっては小学校低学年の時期から発生することもあります。

また、その反対に大人になってから急に発生する場合もあります。子どもがわきが体質であるのか確かめるにはわきがのにおいで気づくこともできますが次に解説するポイントでも子どものわきが体質に気づくことができます。

子どもがわきがか確かめるには

子どもがわきが体質か確かめるために見るべきポイントは、まず「におい」です。子どものにおいで気づく場合が多いと思います。子どものにおいを直接嗅ぐ機会がない場合、子供の服のにおいを嗅ぐと良いでしょう。

次に見るポイントは耳の中です。耳の中にはエクリン腺は存在しませんが、アポクリン腺は存在します。

そのためアポクリン腺の働きが活発ですと耳の中でも汗が分泌されるので耳垢が湿ります。しかし、耳垢が湿っているからと言って確実にわきが体質であるとは言えません。耳垢が乾いていてもわきが体質の人は存在します。あくまで一つの目安です。

家族として過ごしていると鼻が慣れてしまいにおいでは気づかないこともあります。

子どもの年齢が上がると耳の中を見る機会はありません。次に紹介するのは視覚として手軽にわかるポイントです。それは子どもの服の黄ばみです。子どものわきの部分に黄ばみができていたら子どもがわきが体質である可能性が高いです。なぜなら黄ばみはアポクリン腺から分泌される汗に含まれるタンパク質や脂質、アンモニアが服に付着することが原因であるからです。

子どものわきが体質への対策

子どもがわきが体質であったと発覚した際、子どもに自分から遺伝してしまったせいで辛い思いをさせてしまうなどと悲観する必要はまったくありません。

大切なのは親として子どもに向き合いケアしてあげることです。最後に子どもがわきが体質であった場合に取るべき対策を紹介します。

まず、においへの対策です。においへの対策において手軽で効果が高いのはデオドラントや制汗剤です。種類がとても多いので子どもの肌に合うもの、肌に優しいものを選びましょう。次ににおいへの対策としてあげられるのは服をきれいにしてあげることです。

いくら体に気を使っても完全に防ぐのは難しいです。わきがのにおいは染みつきやすいのでこまめに洗うこと、そして早めに買い替えることがにおいへの対策になります。

次にわきがの発生しにくい体質を作ってあげることです。アポクリン腺から分泌されるタンパク質や脂質を減らすことでわきがの発生を少しでも抑えることができるでしょう。具体的には油の多い肉類中心の食事から野菜中心の食事にすることです。

まとめ

ここまでわきがとはどのようなものであるか、優性遺伝の計算によって子どもにわきが体質が遺伝する確率は高いということがわかりました。

子どものわきがは思春期の頃から発生しはじめること、子どものわきがを確かめる方法について紹介しました。産まれてくる子どもがわきが体質ではないのが一番かもしれませんが、産まれてきた子どもがわきが体質であっても悲観したり自分を責めたりしないでください。大切なのは子どもをよく見て、少しでも過ごしやすいように親として支えてあげることではないでしょうか。